第89章 二人の正体
安土城の中を歩く三成を見付け、舞は声を掛けた。
「三成くん…!ごめんね、ちょっと良い?」
呼ばれて足を止めた三成は、舞のほうを向き直す。
「何でしょうか、舞様」
いつもの穏やかな笑みを浮かべた三成に、舞は話し出す。
「三成くん、秀吉さんの御殿にいる葉月さんと、一緒になるって聞いたんだけど?」
「はい、葉月さんを秀吉様の養女にしていただいて、私のところに来ていただく事になりました」
にこにこしながら話す三成に、状況が変わって驚く舞。
「なんか…しばらく会わなかった間にすっかり状況が変わってるね…」
「え…舞様には何もお話しは伝わってませんでしたか?」
三成が舞には何も伝わってなかったのか、と驚いて聞く。
「いや、はっきり聞いてなかっただけで…それより、お祝いを葉月さんに言いに行きたいんだけど大丈夫かな?」
「舞様がお越しになりましたら、葉月さんはきっと喜びますよ。今は武家の心得を勉強中でかなり疲れているようなので、舞様がいらっしゃれば、その勉強も中断されて、ひとやすみ出来ると思います」
「…その武家の心得とやらは、そんなに大変なの…?」
恐る恐る聞く舞に、三成は頷く。
「町娘の葉月さんには大変なだけですよ。襖の開け閉めから指導をされているようですから」