第11章 羊羹
三成が不思議そうに問う。
「…いや、この羊羹、中にあんずが入ってる」
「あんず?美味しくないという事ですか?」
「いや、その反対。なかなか美味い」
驚きながら食す秀吉を見て、三成も羊羹を口に運ぶ。
「…このような組み合わせは初めてですが、なかなか美味しいですね」
三成も同意する。
「しかし、今迄こんな羊羹、出てきた事なかったな。
誰が作ったんだ?」
首を傾げる秀吉の前でお茶を飲む三成。
しかし、わっという声で三成がお茶をこぼした事に気付き、その片付けをしている間に、誰が作ったのか、もしくはどこで入手したのか、女中に聞くのをすっかり忘れてしまう…
「ん、なかなか美味しく出来てる!」
その例の羊羹を作った本人も、自室でお茶を淹れながら一人でのんびり食べていた。
「砂糖は高価、みりんは無い。
しょうゆも醤(ひしお)といって、液体ではないもの。
どの料理も基本は味噌と塩でしょっぱい。
これじゃあ高血圧で、血管切れてばったり倒れるよねぇ。
もっと出汁を効かせて、食生活は改善したほうが良いかも」
ちょこちょこ台所で料理をさせてもらおうと思う葉月だった。