第82章 好きの温度
「そうでしょうか?」
怪訝な顔をする三成に、葉月は隣で歩きながら笑う。
「ええ、私とどちらが三成様を好きか競争しているみたいです」
ぴたりと三成の足が止まる。
止まった三成に合わせて葉月も足を止めて、三成を見上げる。
三成はじっと葉月を見つめていた。
「葉月さんが私を好きなのは、あの家臣と同じくらいでしかないのですか?」
「は?」
「私をこの世で一番好きではいてくださらないのですか?」
葉月は三成の言っている事に気が付いて、背を伸ばし、三成の首に両腕を巻き付ける。
「誰にも負けないつもりです。私は誰よりも、一番、三成様が好きですよ」
すると、安心したように少しため息が漏れ、三成も葉月を抱き締める。
「良かった、私も、同じ、です」
「あら、私のほうが好きなんです」
言い返すと三成も言い返してきた。
「いいえ、私のほうが葉月さんの事を好きです」
痴話げんかなのか惚気なのか、二人の会話はしばらく続いた。