第77章 御殿到着
三成の御殿に着く。
「葉月さんは初めてでしたか?」
「いえ、えーと、忘れ物を届けに一度伺いました」
「忘れ物…もしかして、秀吉様の御殿に本を忘れた時ですか?」
「はい、それです」
「届けてくれたのは葉月さんだったのですか。そうとわかっていたら、私が応対したのですがもったいない事をしました」
「なんでもったいないんですか…?」
よくわからない三成の言葉に、葉月は首を傾げる。
「そうしたら葉月さんに一度多く会えたでしょう?」
三成のにっこりして言う天然の発言に、思い切り顔を赤くする葉月だった。
「でもその時はまだ、疑われてましたから、ご当主の三成様が私に会う訳にはいかなかったと思いますよ…」
葉月から言われ、三成は目をぱちぱちさせる。
「ああ、そういえば…そうでしたね」
「お忘れでしたか?」
赤くなったまま見上げてちょっと睨む表情の葉月に、にっこりして三成は言い切った。
「忘れてました」
そして、額に口付けされ、益々赤くなる葉月だった。