第76章 道端で
茶屋を出てしばらく歩き、茶屋が見えなくなったところで三成は葉月を抱き締める。
「三成様…?」
「富弥の事、勝手に決めて申し訳ありませんでした」
先程富弥の名前を聞いて、表情を変えた事を突いているらしい。
「…いえ、驚きましたけど…茶屋のためでしょう?もう大丈夫ですよ」
葉月も三成を抱き締め返し、安心させるように言った。
「…本当ですか?」
「…本当です」
ふわりと微笑む葉月の笑顔に、三成は少し赤くなって横を向く。
「申し上げましたが…その顔は反則だと」
「え?反則?どの顔ですか?」
戸惑う葉月を更に強く抱き締め、三成は葉月の首筋に顔を埋める。
「貴女は私のものです。富弥にもそれは伝えましたから、もう貴女にちょっかいを出す事はないでしょう。安心してください」
「…わかり、ました。ありがとうございます、三成様…お忙しいのに…」
「忙しいのは問題ではありませんよ…ああ、では、御褒美をいただきましょうか」
「御褒美?」
三成に言われ、葉月が問うと、即座に三成の深い口付けが降ってきた。
「う、ん…ふ…」
同時に三成の手が葉月の背中や尻にかけて往復しながら擦る。
腰の辺りに手がくると、ぞわりとした甘ったるい寒けを感じる。
そのたびにぴくりとする葉月に三成は気が付いていた。
唇を離すと、三成の紫の目に熱がこもり、葉月を見つめる。
「みつ、なり、さま…」
「…早く行きましょうか…」
赤い顔をして見上げた葉月の目も、三成と同じ熱を帯びていた。
恋仲の時を早く持とう、三成と葉月は手をつなぎ、御殿への道をほんの少し早く歩いて行った。