第73章 富弥と話す
「貴方が葉月さんを先日襲った事は、本来なら捕らえるべき事柄です。
しかし葉月さんが無事であったから、貴方を捕まえないで欲しいと言ってます」
「…どういう事だ?その代わり安土を出ろってか?」
富弥の顔が複雑に揺れる。
「安土を出る必要もありません。葉月さんは、貴方が葉月さん本人と茶屋に二度と近づかなければ良い、と言ってるのです」
「葉月と茶屋に、二度と近づかない…」
条件を繰り返す富弥。
「それから、私からも、貴方が今後二度と葉月さんに近寄って欲しくない理由があります」
三成は言い切る。
「葉月さんの全ては私がもらいました。そして今後彼女は秀吉様の養女となり、豊臣の姫として私の許に嫁ぐ事が決まっています。ですから今後は葉月さんに近寄らない事。貴方が入る隙はありません。なので、今回の条件を守ってください」
「葉月の全て…」
富弥は呆然とする。
「ええ、私は葉月さんを抱きました。葉月さんは私のものです」
三成のきっぱりと言い切った言葉に、富弥はああ、やっぱりな、と思う。
そして、豊臣の姫となり三成に嫁ぐことまで決まった葉月に、完全に付け入る隙がなくなったと気付き、ふぅと肩の力を抜き、富弥はうなだれた。
「わかりましたよ、石田様。嫁ぐ事まで決まった葉月に手出しは出来ませんからね」