第73章 富弥と話す
一方、三成は城や御殿とは違うところを歩いていた。
町娘達がきゃいきゃい言いながら話し掛けてくる。
「三成様、今日はおひとりですか?私達とお茶でもいかがですか?」
「すみません、所用があって、急いでいるのです」
穏やかにきっぱり断る三成に、町娘達は落胆の色を隠せないが、三成はでは、と挨拶してさっさと目的の場所へ行った。
「…ああ、ここですね」
着いた店の名前を確認し、中へ入った。
「失礼します」
店内に入ると年配の店主が驚いて三成を見る。
「これは石田様…!我が店に何か御用でしょうか…!」
「あ、いえ、こちらに富弥さんという息子さんはいらっしゃいますよね。
富弥さんにお目にかかりたいのですが」
「か、かしこまりました」
店主は焦って返事をし、奥へ慌てて声を掛けた。
「富弥!富弥をここに呼びなさい!」
そして不安げな表情をして、店主は三成を見た。
「あの…富弥が何か悪さをしたのでしょうか…」
「いいえ、そうではなくて、話しがあって伺っただけです」