第72章 再会
二人の話しを聞いて、春と竹は幼馴染である事がわかった。
「まさか、お春ちゃんが茶屋の女将とは思わなかったわ」
そういえば、春から、もともとは武家の娘だと聞いていた。
竹も、秀吉が嫁ぐ前に武家の心得を竹から学ぶように、と言っているので、きっと武家の出なのだろうと思っていたが、やはりそうだったのか。
二人共、親が足軽大将だったので、しっかり武家の娘としての教育を受けていた。
「お竹ちゃんは秀吉様の御殿で女中頭なのね」
二人は楽しそうに話しているので、葉月は二人にお茶と羊羹を運び、ゆっくり話してください、片付けは引き受けます、と言って奥へ一人で入った。
二人はひとしきり、昔の話しに盛り上がり、やがて竹は、目的の話しを春にする。
―葉月は三成と恋仲になった。
―三成は正室としてしか葉月を迎える気が無く、秀吉が信長に相談したところ、葉月を秀吉の養女とし、豊臣の姫の格式で石田家に嫁がせれば問題ない、と言われ、そうする事になった。
―武家の妻として勉強しなくてはならない事がある為、茶屋の手伝いが難しくなる。よって、こちらが忙しいのであれば、他の者を雇う事を考えて欲しい。
「今朝、葉月から石田様と恋仲になったと聞いた時から、こういう展開になるのではないかと思っていたわ。でもまさか豊臣様からお竹ちゃんが来るところは予想できなかったけれどね」
春は苦笑し、それにしても困った、と言った。
「葉月程、出来る子が果たして雇えるかしらねぇ。
私もあの子のちからを相当当てにしちゃっているのよねぇ」