第10章 みつなり
「あのー、良かったら手伝わせてください」
「あら、葉月さん。良いんですか?」
女中の一人が気が付いて対応してくれた。
「もちろん。出来る事は手伝います」
きっとこの女中の誰かが、葉月を監視しているだろう。
でもだからといって、好き勝手な事だけをしているわけにはならない。
「それでは、このネギを洗ってくれますか?」
「わかりました」
泥がついたネギの束を受け取り、水が張ってある桶のところに座り、丁寧に泥を落としていく。
「ねぇ、三成様、いらしてるわね」
「え?貴女、お見掛けしたの?うらやましい」
「私達にも本当にお優しいわよね」
「それにあの笑顔。
あのお顔を拝見するだけでうっとりするわぁ」
『うーん、また、みつなりが出てきたな…』
初めて御殿に来た時、秀吉と竹の会話の中で、みつなりという名前が出てきていた。
『なに、みつなりだっけな…
聞き覚えはあるんだけどな…』
ネギを洗いながら、女中達の会話をなんとはなしに聞いていた。