第10章 みつなり
「秀吉様、こちらの処理は終わりました」
頼まれた仕事を終わらせ、三成は帳面や巻き物を秀吉に指示された場所に戻す。
「本日はこれでよろしいですか?」
「ああ、これで終わりだが、夕餉を一緒に摂っていけ」
「ありがとうございます」
秀吉は集中すると時を忘れる三成を心配して、仕事ついでにしょっちゅう自分の御殿に呼んで、夕餉を共にするようにしている。
「おまえが来ると女中達がかしましくてな」
秀吉が苦笑しながら言うと、三成は恐縮して答える。
「秀吉様がうるさく思われるのでしたら、ご迷惑ですし帰りますが…」
「ああ、違う、そういう事じゃない。その反対だ、三成」
慌てて言い直す秀吉を、不思議そうな顔で三成は見る。
「反対、ですか?」
「うちの女中達はかしましいのは、三成、おまえが人気があるからだよ」
「…私が、ですか?」
心底驚いた顔をして三成は秀吉を見る。
「何を言われるかと思いましたら…
私より秀吉様や政宗様が町のかたがたから人気はお有りでしょう」
秀吉は諭すように言う。