第10章 みつなり
「秀吉様、失礼します。」
襖を開け、三成が姿を見せた。
「ああ、来たか。早速だが、この処理を頼む」
「はい、かしこまりました」
巻き物や帳面を預かると、秀吉から少し離れた文机に座る。
紫を数滴落とした灰色の髪の後ろが、相変わらずちょんとはねている。
それすら可愛らしくて、と町娘たちから三成は人気だ。
それなのに、本人はのんびりとしたもので、色恋については否定しっぱなしだ。
『私などより、秀吉様や政宗様のほうが、余程人気がお有りですよ』
の一言で終わらせてしまう。
『黙っていても町の娘達が寄ってくるんだから、卑下する必要は全く無いんだがな』
そう思う秀吉だった。
剣道形の練習を終えた葉月は、自室に戻りお茶をすする。
『一汗かいたあとのお茶は美味しい…』
そうだ、と思いついて、茶器を片付け台所へ行く。
夕餉の支度で台所番の女中達が忙しく働いていた。
忙しいのに、きゃっきゃっと、にぎやかで楽しそうだ。