第62章 信長に話す
安土城にて軍議が終わったところで、下段に座る家臣達は先に広間を出た。
信長と中段に位置する秀吉達は残って、最後の確認を行いつつ、舞が用意したお茶と菓子を口にしていた。
「御館様、お願いがあるのですが」
軍議に関する話しが全て終わったところで、秀吉は姿勢を直しつつ、信長に願う。
「どうした?」
信長がいぶかし気に秀吉を見る。
「はっ、三成の事です」
隣に控える三成も姿勢を正し、手をつかえて信長へ頭を下げる。
「三成がどうした?」
「あの、例の上杉と名乗る娘の事です」
一瞬間を置いて、信長はああ、と思い出す。
「あの、上杉の名の割りに刀を持った事のない娘の事か」
「はい、あの時、御館様は、三成が気に入ってるならくれてやる、とおっしゃいました」
「確かに言ったな」
「はい、三成は確かにあの娘を気に入っており、二人は恋仲となっております。
ですので、娘の三成の御殿での生活を認めていただき、ゆくゆくは妻として認めていただきたいのですが」
「妻?側室ではないのか?ただの町娘であろう?」