第8章 秀吉御殿
竹が微笑んで話しかける。
その穏やかな表情に、今日一日の困惑が薄らぐようだった。
「お疲れになりましたでしょう。
お湯浴みなさると良いですね。
その前にお部屋にご案内しましょう」
「…は、はい。ありがとうございます…」
こんなに親切にしてもらって良いのかな、と恐縮しながら部屋へ案内してもらう。
「こちらでございますよ」
ある襖の前で竹が立ち止まる。
自分でそろりと開けると、目に入ったのは自分の荷物。
「あ、これ…」
「ずいぶん勇ましいのですね。木刀をお持ちとは」
竹が後ろから木刀を見て言う。
「…剣道をやってるので…」
これを使ったせいで牢に入れられそうになり、でも、何故か歴史上の重要人物のお屋敷にお世話になるとは、さすがに思いつかなかった、と葉月は思うのだった。