第61章 真実を竹に
「葉月さん、開けていいですか?」
竹が声を掛けるが返事が無い。
「葉月さん、入りますよ?」
襖を開けて見ると、葉月は文机に頭を乗せて眠っていた。
「あらあら、風邪ひきますよ?」
竹は新しい布団を運んできた女中に頷き、女中に布団を運び入れてもらう。
そしてうたた寝している葉月に羽織をかけるが、手元の本に気が付いて手に取る。
「これは…?」
見た事のない色味の使われた装丁。
見た事のない作り。
見た事のない文字。
いや、日本語のようだが、このようなひとつひとつが独立した文字は見た事がない。
一体これは?
竹は本と葉月を見比べる。
すると、かくん、と葉月の頭が動いて、はっと葉月は気が付く。
「ん…あれ?私…」
目をしょぼつかせて葉月はぼんやりと周囲を見回す。
そして、竹が目に入り、竹の持つ自分の小説に気が付く。