第8章 秀吉御殿
御殿に着くと女の人が出迎えに出て来た。
「秀吉様、おかえりなさいませ。…そちらのかたは?」
不思議そうな視線を葉月に向ける。
秀吉は履物を脱ぎながら答える。
「事情があって、暫く預かることになった葉月だ。
竹を呼んでくれ」
「かしこまりました。すぐ呼んで参ります」
その女の人はさっと奥へ行った。
「…あの、秀吉様?今の方は奥様ですか?」
全く状況がわからないので、とりあえず聞いてみる。
「…おい。俺はまだ一人者だ。あれは女中だぞ」
秀吉は苦笑し教えてくれる。
「はあ、さようですか…」
すると、奥から初老の女性が現れた。
「竹、先に伝えておいた件(くだん)の娘だ。あとは頼んで良いか?」
「かしこまりました。万事おまかせを」
竹、と呼ばれた女性は状況を理解しているらしく、秀吉の言に頷いた。
「女中頭の竹だ。このあとの面倒を任せてある。
俺も常にここにいるとは限らないからな。
何かあったら竹に聞くと良い」