第52章 御殿へ戻る
「あらあら、どうしたんですか?」
竹が出てきて、三成に横抱きにされた葉月を見て驚く。
「怖い思いをして歩けなかったのです。たぶんもう大丈夫だと思いますが、このまま湯浴みでもさせてあげてください」
「かしこまりました…秀吉様はおりますけれど、お会いになりますか?」
「はい、お願いします」
「どうぞおあがりくださいませ」
竹のてきぱきした対応で、三成はそっと葉月を下し、葉月の頬をそっと撫でる。
「落ち着かれたようですね」
「…はい…」
撫でられた部分が熱を持ち、思った事のない複雑な感情が葉月を包む。
「私は秀吉様にお会いしますので、ここで失礼します」
「…あり、がとう…ございました…」
小さい声で怯えるようにお礼を言う葉月に、三成は秀吉のところへ行こうとする足を止め、葉月の前に戻りぎゅっと抱き締める。
「…大丈夫ですよ、私に任せてください?」
「…はい、わかりました…」
三成は竹が居るにも関わらず、葉月の額に軽く口付けし、今度こそ秀吉の部屋へ向かった。
「さ、葉月さん、お湯浴みしましょうね」
詳しくはわからないが、葉月の怯えたような表情と口調に、何かあったと察し、竹はとりあえず湯殿でからだへの傷の状況などを確認するつもりだった。