第51章 惑わせる
「葉月さんに乱暴を働く輩(やから)、探して捕らえなくてはなりません」
その言葉に葉月は息を呑む。
しばらくして、また葉月が口を開く。
「…あの…富弥さんを、捕まえないでください…」
「…どうして!?」
葉月の意外な頼みに、声をあげてしまう三成だった。
「私に…近寄らないように、してくだされば…捕らえる必要は…ないですよね…」
「そんな生温い事で良いんですか…?」
襲った相手が近寄らなければ良い、そんな葉月の生温い答えに三成は驚く。
「…はい、富弥さんにはっきり断ってなかった、私も悪いんです…」
「断る…?」
三成の声がいぶかし気に問う。
「はい…秋祭りの時、富弥さんに、自分を好きになれと言われていたんです。
そして、富弥さんから、私の事を好きだとも言われたんです…」
小さな声で最後は囁くように、葉月は話す。
「…その日は…」
それは、三成も葉月に言った事だった。
自分より前に、別な男が、この抱きかかえている葉月に同じ事を囁いていた。