第51章 惑わせる
葉月の様子が落ち着いてきたのを見計らい、三成は声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
ほんの少し、間を置いて、葉月はこくりと頷く。
「怖い目に遭いましたね、もう私がついてますから大丈夫ですよ?」
また葉月は一言も口に出さず、こくりと頷く。
「立てますか?秀吉様の御殿へ送りましょう」
葉月は落ちている木刀を杖代わりに立ち上がろうとするが、恐怖から立ち上がる事が出来ず、足ががくがくと震えるばかりだった。
それを見て、三成は葉月をさっと横抱きにする。
「…み…つ…っ」
驚き、葉月は短く叫ぶ。
「動かないでください。御殿へこのままお連れします」
葉月はされた事のない横抱きに、動悸が止まらない。
しかし、三成の腕の中は心地よかった…
「…助けてくれて…ありがとう、ございます…」
しばらくして、小さな声で葉月は礼を言う。
「先程の男は、富弥、という人ですよね?」
「…はい…」