第50章 逢瀬の相談
時は戻って数刻前。
「舞様、よろしいですか?」
三成の声だ。
「はい、どうぞ」
縫い物の手を止めて、舞は三成が部屋に入るのを許可する。
すると、襖をすらりと開けて、柔らかい微笑みを浮かべながら三成が入ってきた。
「お邪魔して申し訳ありません。舞様にお願いがありまして伺いました」
とすん、と座ると丁寧に用件を口にする三成。
「お願い?私に出来る事かな?」
珍しい、と思い、頼み事の内容を聞く。
「はい。葉月さんに会いに茶屋へ行こうと思うのですが、何か贈り物をしたいのです。
どういうものが喜ばれるのか、舞様に選んでいただきたいのです」
「葉月さんへ贈り物…それは葉月さんに聞いたほうが良いと思うよ?
具体的に逢瀬に誘えば良いじゃない?」
「ああ…贈り物する為の逢瀬の誘い方もあるのですね。わかりました。
やはり舞様に相談して良かったです。早速誘ってみます」
「ああ、待って、三成くん」
急いで茶屋へ行きそうな雰囲気の三成を止める舞。
「何でしょう?」
「茶屋も忙しい刻限があるみたいだから、この前行ったくらいに行くと良いよ」
「成程、そうですか。ありがとうございます。
では店仕舞いの頃に行くのが一番良いですね」
「うん、そうだね」
「ありがとうございました、そのように致します」
ふわりと笑顔を見せ、舞に礼を言って、三成は部屋を去って行った。
そして、三成が茶屋へ近づく頃、道端で男女の揉める声を聞いた。