第49章 富弥(R15)
このままでは辱められる…
その時。
「何をしているのですか?」
聞き覚えのある、穏やかな声がした。
「…み、みつなり、さま…!!」
葉月は涙声で叫ぶ。
富弥はちっと舌打ちし、葉月を離す。
「その声は…葉月さん?」
その場でずるりと崩れ落ちる葉月に気が付き、三成は近付く。
富弥はその隙に逃げる。
「あ、待ちなさいっ!」
三成が声を掛けたが、富弥の逃げ足のほうが早い。
壁際にもたれこんだ葉月からは、ぐずぐずと嗚咽が聞こえてくる。
逃げた男に泣く女。
何が起きたか三成には容易に想像出来た。
「葉月さん、大丈夫ですか?」
三成は急いで葉月に近寄り、肩を抱く。
「…みつ、なり、さま…こわ、かった…」
三成にしがみついて、怖かったと泣く葉月。
葉月が落ち着くまで、三成はその場で葉月を抱き締めていた。