第49章 富弥(R15)
そこで木刀を持って自衛する事にして、少しは気持ちは落ち着いた。
今ではすっかり慣れたが、やはり全神経を集中させて物音に気を張り巡らせていた。
「おい、葉月」
ふいに横から声を掛けられ、葉月は飛び上がる程驚く。
「お、突然悪かったな、大丈夫か?」
暗がりから現れたのは、富弥だった。
「…富弥さん…」
驚いて心臓がばくばくしているところに、富弥が現れ、違う意味で鼓動が激しくなる。
「そろそろ俺に会いたくなるだろう、と思ってな」
「…えーと、ごめんなさい、思いません」
にやりと笑う富弥に、つっけんどんな対応で葉月は返す。
「なんだよ、つれないな」
そういって富弥は近付き、葉月から木刀を取り上げ、ぐいと葉月の腰を抱く。
「富弥さん…離してください…っ」
「どうしてだ?俺に惚れろ、と言ったはずだが?」
「…ごめんなさい、惚れません」
すかさず返事を葉月はする。
「…どういう事だ?」