第48章 戦国の夢
秀吉と政宗がそれぞれ御殿へ帰ってから、舞は襖を開けて廊下に出、空を仰ぐ。
『秀吉さんの夢は、身分差の無い世…誰もが笑って生きられる世…
そんな大きな夢を持っているなんて、知らなかったな…
そういえば政宗も、誰もが当たり前の生活が出来る世にしたい、って言ってたなぁ…』
舞はほうっとため息をつくと、廊下の柱にからだを預けるように座り、ぼんやり空を見上げながら考える。
『信長様は天下布武で、世界と同等のちからをつけるひのもとになさりたいようだし…
家康は、江戸幕府を開いて、200年間、戦の無い時代を作った人だし…
光秀さんは、足利将軍家を再興したいような事をおっしゃってた事があったな…
こうして思うと、私はすごい人達と同じ時代を生きていく事にしたんだな…
みんなの信念が実って、後につながる良い時代になるよう、私が出来るのは何だろう…
私もみんなの役に立てる事を考えなくちゃ…』
廊下で空を眺める舞の姿を、光秀が少し離れた廊下から見ていた。
「全くあの小娘は、こんな刻限に何をしているのやら」
くくっと喉の奥を鳴らし、光秀は舞の無防備な姿を、しばらく眺める。
「黙っていると、愛らしいのだが、な…」
表情がやたらよく顔に出る舞だ。
誰を愛しているのか、ちょっと観察すればすぐわかる。
光秀は舞の横顔を記憶するように見つめると、そっとその場を離れて行った。