第48章 戦国の夢
「ははっ、三成のやつ、急に男になったな」
政宗は書庫での出来事を秀吉から聞いて、笑いを止めなかった。
舞も驚きながら秀吉に言う。
「秋祭りに行こうって声を掛けて数日なのに…三成くん、急激に変わったね…」
「抱いてもいないのに妻にしたい、か。相当惚れてるんだな」
政宗は面白そうに言う。
「しかし…俺達武士が町娘を妻にするのは、今はまだ難しいよな。
側室にするのではないのだろう?」
途端に真剣な表情に変わる政宗に、舞はまゆをひそめる。
「武士と普通の娘さんは結婚出来ないって事?」
「出来ない訳じゃないがな、身分ってものがあるからな。
俺達武士は基本的に同じ身分の家の娘を娶る。
信長様くらいになると、京から公家の姫を輿入れさせる事もある。
現に今川義元の母親、寿桂尼(じゅけいに)殿はもともと公家の姫だった人だ。
だから町娘を妻とするなら、側室として迎える事になる」
「でも、三成くんは、葉月さんを側室にするつもりはないって言ってるんでしょう?」
「ああ、あいつ、俺の『身分差のない誰もが笑える世にしたい』って夢を慕って、俺についてきてくれてるからな。俺もあいつの希望は叶えてやりたいんだ」
秀吉の夢を初めて聞いた。
未来では当たり前の、身分差の無い誰もが笑えている世の中。
ここ戦国ではまだ夢、なのだ。