第47章 書庫にて
突然の変わりように、秀吉は開いた口がふさがらない。
後ろから、書庫に入ろうとして入口に来ていた家康も、珍しく本気で驚いたらしく、持っていた本をその場でパサリと落としていた。
後ろを振り返った秀吉は、本を拾う家康を見る。
「家康…」
「なんか…聞いた事のない言葉を、たった今、聞きました…」
家康は本を拾うと、書庫の中に入り、三成をじろりと見る。
「おはようございます、家康様」
家康の気を知らず、普段通りに挨拶をする三成。
「おまえ…その娘の全てを自分のものにしてどうするつもり?」
「家康様、私と葉月さんの事を気に掛けてくださるのですか?」
ぱあっと満面の笑みを浮かべる三成に、うんざりした顔をする家康。
「どうなったらそういう事になるんだよ。葉月の処遇について、俺は聞いたの」
「葉月さんの事ですか?
私は妻に迎えたいのですが…秀吉様、難しいでしょうか?」
突然、秀吉に話しが振られ、秀吉も三成の昨日までとの様子の違いに動揺した。
「いや、その、どうなんだろうか…
まだ、葉月はおまえの妻になると言ってないのだろう?」
「はい、何せまだ、私への気持ちもわからない、とおっしゃってますので」
「なら、妻にするしないなんて、だいぶ先の話しでしょ」
「そうですか…やはりまだ抱いてもいないですし、早いですか…」
三成のさりげない爆弾発言に、秀吉と家康は何も言えなくなった。
「秀吉さん、俺、やはり、三成と一緒に居たくないです」
家康の心底からの発言、だろう。