第42章 富弥の告白
鼻で笑う富弥に、真面目に言い返す葉月。
「勿論です。この色と柄、その人がいつも履いてる袴と同じなんですよ」
風車の灰色の地に格子柄を見て、ふと、富弥は思い出した。
『この間、茶屋におんな連れで来ていた武将が、こんな柄の袴を身に着けてたな。
確かあの武将は…』
「わかったぞ。おまえ、さっきまで石田三成様と一緒に居たのか」
富弥に当てられ、つい、葉月はうろたえる。
「そ…そうです。いけませんか?」
富弥はそれを聞いて、腹を抱えて笑い出した。
「な、なにがおかしいんですか…!」
葉月は突然笑い出した富弥に驚いて聞く。
「葉月、おまえ、ずいぶんおぼこいんだな。
石田様がおまえみたいな、ただの町娘を相手にする訳ないだろう?
その理由に、今、おまえはこうしておいてきぼりにされてるんだろう?」
意地悪く、それでも本当の事を言う富弥に言い返せず、葉月は無言になる。
「石田様はあの容姿であの性格だ。
おんな達からそれこそものすごい人気があるんだぞ。
それを、たかが茶屋で羊羹作るおまえ程度の女が相手にしてもらえると思うなんて、ずいぶん石田様も罪作りだな。
…それも風車一つで浮かれる安いおんな。
本気になられたら危ないと思って、他のおんな達のところに行ったんだろう?」
「そ、そんな言い方…ひどい…」