第42章 富弥の告白

富弥の言い方に青ざめる葉月。

「私…一人で帰ります…」

踵を返して富弥から離れて帰ろうとする葉月。

だが、腕を富弥に掴まれ、富弥の両腕の中に閉じ込められる。

「富弥さん…離して、ください…っ」

もがく葉月を抑え込みながら富弥は言う。

「なぁ、葉月。人間には分があるんだ。おまえに石田様は釣り合わない。
わかるだろう？あちらは武士だ。
あちらが最後に相手にするのは武家の娘や、町屋なら大店（おおだな）の娘だ。
…だから、おまえは俺にしろ、葉月。俺はおまえが気に入ってる」

富弥の最後の発言に、驚いてもがくのを葉月は止める。

「…どう、いう、こと…ですか…」

富弥は動くのを止めた葉月をますますきつく抱き締め、葉月の首筋に顔を埋める。

「どういう事もない。俺は茶屋で働くおまえを気に入ったんだ」

「…お菓子が気に入って…来てたのだと、思ってました…」

抱き締められたまま葉月は答える。

「羊羹も気に入ったがな、葉月、俺はおまえが好きだ」

『好き』

言われた事のない言葉に、ぐらりと葉月の心が揺らめく。