第42章 富弥の告白
先程の夜店の間を、今度は富弥と歩く。
「葉月、欲しいものがあったら買ってやるよ」
「あ、ありがとうございます…特にないので気にしないでください」
「ふーん」
葉月の返事につまらなそうに鼻を鳴らすが、風車を手にしているのに気が付く。
「それ、どうしたんだい?」
「風車ですか?一緒だったかたが買ってくださったんです」
「ずいぶん地味なもの、買ってもらってんだな」
ずいぶんな言いようだな、と思いながらも葉月は言う。
「でも、これ、私には特別なものなんです」
葉月は風車を目の前に持ち上げて、ふふ、と微笑む。
「特別?」
「はい。男の人から初めて買っていただいたものなんです」
嬉しそうに微笑む葉月に、まゆをひそめる富弥。
「初めて買ってもらったものが風車なんて、ずいぶんお安いんだな」
さすがにこの言い方には葉月の気に障った。
「富弥さん、その言い方はないです。金額の高い低いじゃないですよ。
その人の気持ちがこもっているなら、道端の石だって嬉しいんですよ」
「ふーん、その風車には、贈ってくれたやつの気持ちがこもってるって事か?」