第6章 明智光秀
「!」
目を見開いたまま、見上げて光秀の顔を見る。
「…な、な、なに、する、ん、で、すか…っ」
動揺してしどろもどろに口を開く。
明らかに顔も熱を持って赤くなっているに違いない。
光秀はまた笑うと、秀吉を見る。
「顔にすぐ感情が出る小娘なぞ、いかに人不足になっても上杉は偵察に使わぬだろう」
「しかし…」
何か言いたげな秀吉に、光秀は話す。
「この小娘の様子では、ただの妙な格好した町娘にしか見えぬ」
「いや、そうだとしても、だ。
御館様が不在の今、治安を悪化させるわけにはゆかん。
だからこそ、怪しい者はひっ捕らえておかなくては」
秀吉のごく真っ当な考えに、頷いて同意をした光秀だが続ける。
「しかし、だからといって、こんな小娘を牢に入れるのは、おまえの性格からして不本意ではないか?」
光秀の言に、無言で肯定を表す秀吉。
その無言の肯定に、光秀は深い笑みを浮かべる。
「提案だ。この小娘を牢には入れぬ。
代わりに秀吉、おまえの御殿に置いて見張れば良いだろう」