第40章 秋祭り
その目にとまった自分の袴と同じ色柄の風車を三成は買い、葉月に渡す。
「え…良いんですか?」
「良いんですよ。私が貴女に買って差し上げたかったのですから」
「…あ、ありがとう、ございます。
その…男の人から物をいただくのは、初めて、です…」
顔を赤くして礼を言う葉月が、男から初めてものをもらった、と言う事に三成は驚く。
「貴女ほどのかたが、今迄殿方より何もいただいた事が無いのですか?」
「貴女ほどって…私程度の人はぞろぞろいらっしゃるでしょう?
…風車、大切にしますね、ありがとうございます」
苦笑して、大切にする、と三成に言う。
そして、葉月はふーっと息を風車に吹きかけ、くるくる回す。
回るのを見ながら、三成を見て、満面の笑みをこぼす。
「よく回りますね…!」
その笑顔を見て、三成の心にすとんと何かが落ちた。
『ああ、今、はっきりわかりました…こういう事でしたか…』
-今迄、他の女人は全く目に入らなかったのに、どうして、葉月さんは視界に入ったのだろう。
-木刀を持っているの珍しい姿を見たのが初めてだったから、だろうか。
-秀吉様の御殿で、井戸で水汲みに悪戦苦闘していたのを見たから、だろうか。
-違う。