第35章 秋祭りに誘う
中へ入ると、三成は葉月に声を掛ける。
「はーい、ちょっと待ってください」
奥から声がし、葉月が手を拭きながら出てきた。
「…三成様?舞様?どうしたんですか?
えーと、羊羹、何かおかしかったですか?」
二人の姿を見て、不思議そうに声を掛ける。
三成は、ずい、と葉月に近寄り、両手を握り、話し掛ける。
「葉月さん」
「…は、はい?」
いきなり近寄ってきたと思ったら手を握られ、葉月は驚きながら返事をする。
「秋祭り、一緒に行ってくださいませんか?」
「あき、まつり?」
そんなものがあるのか、と葉月は目を瞬かせる。
どうでしょう、と真剣な紫の瞳が、葉月を見つめる。
「ええと…お茶屋の手伝いが…」
案の定、の答えが葉月の口から出てきたが、春が声を掛けた。
「行ってきなさい、葉月」
「春さん…」