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心のキャンバス

第4章 私の色


「何してんの?」
「え?」

振り返ると、何故か一希先輩が居た。

「な、何で居るんですか!?
 今日は休みのはずじゃ…?」
「ああ、今来た。で、何してんの?」
「いや、その、昨日描いていた絵を
 もう一度見たいと思って…すみません。」
「ふーん。」

どうやら怒ってはいないようだ。
先輩はその場に荷物を置き、
絵を布が被った状態のまま取って、
私に渡してきた。

「これ?」
「あ、はい…。」
「はい、やるよ。」
「え、良いんですか!?」
「出展では別のものを描くし、失敗作だし。」
「あ、ありがとうございます!」

優しく絵を受け取り、
そっと、布を捲ってみた。
やはり、何度見ても綺麗だ。

『何でこれで失敗作なんだろ。』

私には不思議で仕方がないが、
きっと本人にしか
分からないものがあるのだろう。

「本当に、貰って良いんですか?」
「うん。取っておいても捨てるだけだし。」
「捨てる!?じゃあ貰います!」
「ん、どうぞ。」

『わーい!捨てるなんて勿体無い!』

視線を感じたので、顔を上げると
先輩の顔が目の前にあった。

「うわあ!?」

私は思わずよろけた。
パシッと何とか先輩に腕を引っ張られ、
転ばずに済んだ。

「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です!」

顔が近くて驚いて転んだとか…
ダサすぎる(泣)

「あの、どうかしたんですか?」
「んー?何となく。」

女好きと言う噂は、
案外当たっているのかもしれない。

「あのさ、何で描かないの?」
「え?描く?」
「そう、自分で。俺の絵ばかり見てない?」
「あーまぁ。」

『先輩というか、人前で描きたくない。』

すると先輩は、
棚から新しいキャンバスを取り出した。
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