第4章 温泉旅行/呪術/五条悟/非術師彼女/※途中
繭の記憶にある限り、デートのリスケはこれで3度目だった。
五条の仕事をよくは知らないが へらへらしつつもとにかく忙しそうなのは感じていたし、ある程度は仕方ないとも思っていた。
とは言え、再三のドタキャンの挙句にフォローコールやご機嫌とりの連絡もなし こちらからせっつかなければ次回デートの約束にすら漕ぎ着けないのだから、繭の方もいい加減我慢の限界だった。
今日会えるのだって2ヶ月以上ぶり、久しぶりであるから怒らず不機嫌にならず穏便に楽しく過ごしたい思いはある。さりとて前述のように、相手の態度は不誠実極まりないのもまた事実。こちらからの他愛無い連絡の1つにすらレスなしという傍若無人ぶりだ。
駅前の待ち合わせ場所でスマホを見ればすでに12分の遅刻、しかも謝罪連絡もない。もしかしたらこのまま、メール一本で前回同様ドタキャンを食らう可能性だってある。
五条悟はとにかく顔がいい、体格も文句なしで金回りも抜群だ。これだけ忙しい身であるからさぞかし仕事も出来るのだろう。この申し分のない超ハイスペックの裏にある 人間として男として、全く誠意のない態度にはいい加減愛想が尽きそうだった。
「……………」
穏便に、穏便に。そう思えば思う程、ちりちりした怒りが湧いてくる。今日すっぽかされたら今度こそ、あんなだらしのない男はこちらから派手にフってやる!! そう決意しスマホからコールをしようとした瞬間。
「おまた〜」
ようやく渦中の人物が現れた。車の運転席から いつものへらりとした笑みを浮かべて。さらにその風貌は、繭の神経を逆撫でするに等しいものだった。
「遅い。しかもなんなの、その格好」
今日は久しぶりのデートだと言うのに。こちらは1週間前から美容院やらネイルサロン、パックにマッサージにと気合の限りを尽くしてきたと言うのに。
「いやー急な案件に駆り出されちゃってて。帰る時間なかったワケよ」
数回だけ見たことあるが、五条は仕事着(?)のままではないか。どんな理由で目元を隠した真っ黒ずくめの服を選んでいるのかは知らないが、せめてデートの場ではお洒落なものでなくとも私服くらいは礼儀であろう。
「てか、なんで車なの。電車移動って連絡したよね」
「え?本当?見てないや連絡」
「…………」
「ゴメンねー」