第4章 温泉旅行/呪術/五条悟/非術師彼女/※途中
「ま、繭がどーーーしても見たいって言うなら運転変わってもイイけど」
「ホント?でも無理させるのも良心が痛むしなぁ」
「いいよ。繭が選んで」
大きな掌が首の裏に回る。親指が耳を撫で、それらしくピアスをかすめた。横目を向ければ相変わらず 五条は口元に余裕の笑みを浮かべたまま、髪を絡めとるあからさまな手の滑らせ方には 少しだけぞくりとする。五条の声色がやや低くなる。
「どーする?」
「どう…って」
「五条悟 横から見るか下から見るか」
「え……?」
「今、運転する僕を横から見るか。夜、繭にエッチなことする僕を下から堪能するか」
「な……はあ?」
「だってそうでしょ、お昼寝しとかないと僕夜寝ちゃうしー」
「……っ」
そして信号は青。仕方なく頭を切り替え車を走らせた。
五条は腕を引っ込めると背を深くシートに据える。きっとこの男には最初から運転する気はないのだろう。
「……はぁ、いいよ わかった。まあ運転は嫌いじゃないし頑張る」
「さすが繭!!頼りになるねぇ」
「悟は寝てていいよ」
「うん。そのつもり」
五条はにんやりご満悦そうだ、横から明るい声がする。
「その分 夜は、期待しててね」
「……な、なにを……」
「ナニってそれ聞く?モチロン夜の
「ああぁあ〜やっぱいい!聞かない!!」
「山岳付近ならではの、季節の変わり目イイ所取り贅沢フルコース。繭の好きな地酒もあるよ」
「……え?……ああ、うん……」
信号はまた赤。
どぎまぎしつつ横目で五条を伺えば、思い切りニヤニヤしながら白い歯を惜しげもなく披露し、からかう声を出してくる。
「ヘンなこと考えちゃった?」
「か、考えてない!!」
「ホントかな〜 先生〜 繭ちゃんがいやらしいこと言ってる〜」
「言ってない!!てゆうか先生ってなによ!」
「あ、どちらかと言えば僕か。先生」
「えっ?なんで」
「あれ 言ってなかった?普段は教鞭とって生徒指導してる身だからね」
「初耳なんだけど……そしてめちゃくちゃ嘘くさい」
からからと軽快に流れる会話のテンポも、ようやく自然に馴染んできた。