• テキストサイズ

〈短編〉気まぐれに色々

第2章 群青の空/犬夜叉/殺生丸/妖怪夢主


強く頭部を殴打され、いよいよ意識が揺らいだ。竜の姿を保つ事も困難となり 傷付いた身体は再び小さく崩れ落ちてしまった。

胸元のはだけた着物からは上半身が剥き出しになる。白い布地も肌も、血に濡れ真っ青に染まっていた。呼吸が苦しくなり大きく息を吸い込めば 器官に落ちた血液が邪魔をし 激しく何度も噎せ返った。

「噛み付く力も失せたか」

反論を返したくとも声が出なかった。指先すらまともに動かなかった。

それでもきっとまだ死ねない。この身が少しづつ弱り腐るのを感じながら、朽ちて行くのを待つしかないのだ。

この地の風だけはさわりと優しく、長い髪を撫でてくれる。

「これが誇り高き竜の慣れ果てとは、無様なことよ」


ちりちりと喉の奥が熱くなる。それは大きく溢れ出す、気付けば意思とは無関係に 頬が白く濡れていた。

「…………………っ、」

“無念”

全てを受け入れる一言がどうしても口から出なかった。悲しみの嗚咽だけが掠れながら宙を舞う。澄んだ瞳を濁す雫が何なのか、どうしてか思い出せなかった。


獣の臭いと、踏み躙られた花の香が近付いてくる。

「そんなに死にたくば、一度死んだ命」

その立ち姿は野を駆ける獣とは思えぬほど、気高い色を見せていた。

「この殺生丸のために捨ててみるか」







/ 18ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp