第2章 群青の空/犬夜叉/殺生丸/妖怪夢主
強く頭部を殴打され、いよいよ意識が揺らいだ。竜の姿を保つ事も困難となり 傷付いた身体は再び小さく崩れ落ちてしまった。
胸元のはだけた着物からは上半身が剥き出しになる。白い布地も肌も、血に濡れ真っ青に染まっていた。呼吸が苦しくなり大きく息を吸い込めば 器官に落ちた血液が邪魔をし 激しく何度も噎せ返った。
「噛み付く力も失せたか」
反論を返したくとも声が出なかった。指先すらまともに動かなかった。
それでもきっとまだ死ねない。この身が少しづつ弱り腐るのを感じながら、朽ちて行くのを待つしかないのだ。
この地の風だけはさわりと優しく、長い髪を撫でてくれる。
「これが誇り高き竜の慣れ果てとは、無様なことよ」
ちりちりと喉の奥が熱くなる。それは大きく溢れ出す、気付けば意思とは無関係に 頬が白く濡れていた。
「…………………っ、」
“無念”
全てを受け入れる一言がどうしても口から出なかった。悲しみの嗚咽だけが掠れながら宙を舞う。澄んだ瞳を濁す雫が何なのか、どうしてか思い出せなかった。
獣の臭いと、踏み躙られた花の香が近付いてくる。
「そんなに死にたくば、一度死んだ命」
その立ち姿は野を駆ける獣とは思えぬほど、気高い色を見せていた。
「この殺生丸のために捨ててみるか」
終