第6章 未来人
だからと言って無視したり出来なくって…
側に居てやらなきゃ
何処かへ行ってしまいそうで
なんとも言えない感情が
あらたを通して感じ取ってしまうのだ。
少し早足であらたの部屋へ向かうと
縁側で横になって眠っているあらたの側に
秀吉さんが居た。
「 心配して来てみれば…あらた、起きろ!
ちゃんと部屋で寝ろと言っただろ!」
ー…何で?
そう、いつの間に
あらたと秀吉さんは近づいたのか
あんなにも突き放していたはずの
秀吉さんがあらたの世話?
「 …何があったんです?」
そんな事を気にしている素振りを
見せないように話しかける。
「 あー…いや、朝たまたま通ったら
あらたが此処で寝ていてな…
女中もどう対応していいものかと横で慌ててな。」
何ともはっきりしない答えに
本当に嘘がつけない人と言うのは
こう言う人なんだと
捻くれ者の俺がわかってしまうのは
自分に素直さなど
持ち合わせていないからだろう。
俺の知らない間に
秀吉さんとあらたの中で
何かあった事だけはわかるのだ。