第6章 未来人
「 …家康様ッ…! あらた様が!」
朝の第一声、その声で目が覚める。
襖の向こうから聞こえる
慌てた様子の女中の声。
「 …何?あらたがどうしたの?」
「 …あ、あの、あらた様の
お部屋まで今すぐ来て頂けますか?」
相変わらず、慌てた様子で話す女中に
只事ではないのだと段々と頭が冴えてくる。
急いで褥から出て、
夜着のまま打掛だけ羽織り、部屋を出る。
「 だから…こんな朝早くから何?」
内心は焦りがあったものの
至って冷静に頭を下げて待っていた
女中に問うとこう答えた。
「 昨日確かにお部屋でお眠りに
なられたはずなのですが…
朝、お部屋を伺うと、縁側で
お眠りになられておりまして…
今もまだそこに… 」
「…は?」
何故、外で寝ているのか
検討もつかず…そして
ぐっすり眠る姿に
どう起こしていいのかわからず
俺の所へ来たらしい。
ー…ほんとあの人は…
何に対しても無頓着で
俺らに対しても興味を示すことなく
自分のペースは崩さない。
表情からは
いつも何を考えてるか
わからない。
本当に五百年先から来たのか…
そう思えるほど冷静に
物事を受け止めている。
そう感じているのは
俺だけじゃないはず…