第5章 素質
ー だからイラつくのか、
いつだって、落ちてもいい
いつだって、この命捨てても
構わない。
ー あぁ、あの時の俺と一緒じゃないか…
「 何があったんだ… 」
袖を捲ると近くで見ればみるほど
痛々しい痣がくっきりと腕に残っている。
『 あー…規則的にあるんです。
身体中に痛みが…
力任せに抑え込んだせいで…たまたまです。』
そう言って顔色も変えずに
淡々と話すあらたの姿が目の前にある。
自分が傷つくことも
自分が苦しむ事も当たり前だと
言わんばかりの顔をしている。
「 …お前は馬鹿なのか?」
掴んだ手をそのままに
俺は歩き出した。
自分と重なるからなのか
あらたと言う人物が
俺にこうさせたのかはわからない。
『 この事は… 』
「 いいから黙ってついてこい。」
部屋に着くなり
医療道具を出す。
家康のようには行かないが
ちょっとぐらいの怪我などは
見れないわけではない。
「 …いつからだ?」
爪が食い込んだであろう傷口に
薬を塗り込み、包帯を巻く。
相当苦しんだのだろう
痣はくっきりと手の跡が残っていた。
聞けば、この時代に来てから
発作が起き始めた事。
起きるのは新月と満月の夜。
少しの間に起きる事。
それ以外はわからないと
まるで他人事のように話をする
あらたを見て確信する。
何もかもどうでもいい。
いつ死んでもいいだなんて、
思っていたとしたら