第5章 素質
「 信長様はまだ様子を見ろと…だが、
このままではただの生きる屍だろ?」
「 …面白い玩具でも見つけたような顔だな。」
俺の考えがわかっているかのように話す光秀。
そう、俺の心を見透かすこの態度も
イラつく原因なのだろう。
「 で、俺に話してどうしたい?」
「 …今夜、水汲み場まで行け。」
「…は?」
「 お前の見たいものが見れる。」
またいつもの様にニヤリと笑うと
部屋を出て行く光秀。
ー…最後の最後まで話していけ…!
光秀の言葉の意味は
ある程度は理解出来た。
だが、五百年も先から来た人間に
それをやらせると言うのか…
ー…生きた屍か……
夜まで時間がまだある。
光秀の言う、水汲み場へ行く前に
今ある仕事を片付けることにした。
邪念を払うかのように集中して…
それから言われた時刻に
水汲み場に向かうと
片腕を夜着から出しているあらたが目に入る。
ー なんだあれは…
月があらたを見つけよと
言わんばかりに明るく照らし、
夜着から出したあらた
の腕は青黒い痣が見えた。
だがそれとは反対に
体はきらきらと月明かりで
輝いてみえたのだ。
ー …一体、どう言う事だ…
月の光で輝くだなんて
俺の目はおかしくなったのか…
そう思っていると
普段読み取ることの出来ない
その姿が痛みに歪み、苦しそうに
しているのが見え、我に帰る。