第5章 素質
ー ここの人たちは何も言わずに
手を引っ張るのが普通なのか?
黙って着いていくと、部屋に通される。
「 腕まくって、そこに座れ。」
そう言うと棚から箱を取り出し
俺の正面に座る。
「 …いつからだ?」
血の滲む夜着を肩まで捲り、
じっと傷口を見ながら話す。
『 本能寺で…いや、ここに来てからです。』
「 規則的と言っていたな…わかるのか?」
『 新月と満月に、』
箱から何かを取り出して、手際よく治療していく。
その手元をじっと見つめて
この時代の処置の仕方を頭に入れながら
豊臣秀吉が発する質問に淡々と答えていく。
またこんな事があったら
今度は自分でどうにかしなければならない。
そう考えていると
「 お前は…本当に馬鹿だな。」
豊臣秀吉がフッと笑った気がして
視線を上げると頭をポンっと撫でられる。
処置が終わったのか、俺の側から離れ
お茶を入れてくれている。
『 ……… 』
「 誰にも言わず、ずっと一人で耐えていたのか?」
『 …対処の方法も原因も掴めてません。
それに二分…あー…息を四十から五十ほどすれば収まるので…』
ー本当は息なんて出来ないぐらい痛いが…
そう答えるとじっとこちらを見て
返ってきた言葉は意外なものだった。
「 …秀吉でいい。」
『 え?』
そう言ってお茶を渡されるも
この人が何をしたいのか
イマイチ掴めずにいた…