第5章 素質
『 …綺麗だな、お前はいつも… 』
今度は血が出ている腕が
軽く痛み出す。
ー 飲むついでに洗い流すか…
真っ暗な廊下を
月明かりだけでは見えないので
灯明を持って出た。
ー 相変わらず静かだな、
この時代と現代では
こんなにも違うものなのかと
しみじみ感じることになるとは…
少しずつ現実味を帯びてきた戦国の生活。
未だにわからないことのが多いが
周りが良くしてくれるおかげか
それなりに生活が出来てきていた。
水汲み場に着き、水を汲む。
…ちゃぷん、
水の音が静かな夜に響く。
こんな音でさえも儚いと思えるのも
この時代だからなのか。
カラカラに渇いた喉を
汲んだ水で潤す。
『 はぁー…、』
こっちは現代とは違い夏になる。
なのに現代よりも涼しく
止まらなかった汗も夜風に当たり、
更に水を飲んだお陰か汗も引いていく。
夜着の上だけを脱ぎ
血が滲んでいる腕にかけて洗い流す。
『 さて…どうしたものか、』
はっきりとわかる傷と
圧迫してしまった事による痣…
くっきりと手形が出来てしまった。
自分で手当しようにも
道具など持ち合わせておらず
貰いに行くにも家康の所へ
行くわけにも行かない。
その場で考えてこんでいると
背後に気配を感じる。