第1章 500年前
ー こんなもんつけてたら担いで逃げれない。
ついさっき、頭から被った水は乾いてしまい
被っていたフードもジリジリと少しずつ穴が開き始めていた。
『 指先が…くっ…熱い… 』
何とか甲冑を外せるだけはずし、
自分の着ていたパーカーを被せて背負う。
ー くっそ…このままだと2人ともダメになるぞ…
襖を蹴破り、廊下に出るも
火の手が少ないほうに進むしか選択肢がなかった。
『 ゲホッゲホッ!!』
額からドンドン汗が流れ落ちていく…
できるだけ息を吸うことを控えても
大の男を担ぎ、酸素の少ない中を歩くのに
息を出来るだけ吸わないなど到底無理な事だった。
咽せるたびに口の中が乾き、喉が焼けていく。
とにかく、此処から出る…
そう…無我夢中で寺の中を歩いた。
別に死んでもかまわないとさえ思っていたのに。
『 ゲホッゲホッ!!』
どうやって外に出れたのかもわからない。
気がつくと外に出て、その場に崩れ落ちるようにして担いで来た人を下ろす。
『…くっ…、』
振り返るとさっきまでいた寺は
真っ赤に燃え上がっていた…。
ー 一足遅かったら出れなかったな…
口元を押さえることが出来なかったせいで喉が焼けて声が出ない…何とも言えない痛みが身体中を襲い、自分もその場に倒れ込んだ。
顔は少し焼け、手先は甲冑を外すときに
火傷をしたのか皮がめくれていた。
『 ……いっ…た、』
ふと背負って来た人を見ると
崩れ落ちた拍子に意識が戻ったのか…同じように咳き込んでいた。