第1章 500年前
「 ゴホッゴホッ!貴様…何者だ…。」
地面に顔を向けて咳き込んでいた人がスッとこちらを向く。
紅い目に鷹のような鋭い眼差し…
たが、答えたくても声が出ない。
『 ゴホッゴホッ…ヒュー…、』
空気が抜けるような声しか出ず、
声が出ないと首に指をさす。
その姿を見て、理解したのか
「 …声が出んのか。」
その言葉に頷く。
どうやらこの人は意識がなかったものの、
大した怪我は無さそうに見えた。
「 貴様、妙な格好だな… 」
火除けで着せたパーカーと俺とを交互に見る。
ー…何かがおかしい。
自分でもそう思った時だった、
「…信長様!よくぞご無事で!」
遠くから、助けた人とは別の声が聞こえる。
「 …くっ、秀吉か…状況を教えろ。」
「…は、何者かが本能寺に火を放ったと見られます。今、光秀がその者の後を追ってます。」
「 …状況が明確になったらすぐに知らせろ。」
「 わかりました。…にして信長様、この者は…?」
二人の会話を横になりながら何とか聞いていたものの
段々と痛みが増してくる身体。
『 ……っ、』
無事に外に出れた安堵感と同時に
只ならぬ全身への激痛に意識が遠退く。
火傷などではないミリミリと骨が軋むような痛みが襲う。
その痛みに二人の会話もだんだんと
聞こえなくなって行く…。
『 …いっ……、』
「 ……おい、しっかりせえ!」
…その声を最後にまたプツリと意識が途絶えた。
ねぇ、あらたは死んだらどうなると思う?