第3章 御対面
さっきまで穏やかだった場の空気が
越後の龍に甲斐の虎…
その二つの言葉を聞いた途端に
ピリピリとした殺気を放つ。
ー …一言でも何か言えば斬られるな…
そんな殺気漂う空気を
立ち切ったのは豊臣秀吉だった。
「 待て、光秀…わざわざ噂ごときでお前が出向くことはないだろう。」
「 何故だ?」
「 万が一にも敵に寝返ったりしたら…妙な真似をしないとここで誓えるか?」
「 口先だけの誓いを立てて何になる…?」
「 光秀っ!お前ってやつはどうして…!」
「 貴様らやめんか!」
パシッと扇子を叩く音とともに
信長の声でその場が静かになる。
話の内容はあまり汲み取れないが
何となく、自分の疑いの目はなくなり
違う事で更に言い合いをしているようだ。
「 光秀、越後の偵察はお前に任せる。龍と虎の生死をしかとその目と耳で見極めてこい。」
「 はっ!」
そう言うと信長は席を立ち
俺の顔を見る。
「 あらた、お前の話をまた改めて聞く、それまで大事にしろ。」
そうして席をを立つ織田信長に
周りは次々に頭を下げてその姿を見送る。
それを横目に
俺自身も軽く頭を下げた。
姿が見えなくなった途端に
政宗が俺を見て笑う。
「 淡々と信長様と話す奴なんて今まで見たこともないぞ。」
そう言ってまたその時のことを
思い出したかのようにケラケラと笑い始める。
『 何が面白いかわからないが…これから世話になる。』
「 あぁ、よろしくな。改めて俺は伊達家十七代目 当主 伊達政宗だ。そしてこっちが… 」
『 ここに居る皆んなの名前は知っている。偉大な歴史上の人物で教わった。だから…大丈夫だ。それに既に呼び捨てにしろと言ったのは政宗自身じゃないか。』
「 そりゃそうだけどよー。」
「 教わったって誰に…?」
政宗の後に家康が眉間に
皺を寄せたまま話す。