第3章 御対面
「 で、あらたと言ったな。帰る見込みはあるのか?」
その言葉に騒いでいた周りの視線が
またこちらに向くことになる。
『 …帰れるかもわかりません。現にどうして此処に来たのかも、原因が掴めていないので。』
ー ただ電車で居眠りしていただけ、
なんて言葉通じないだろうしな…
「 …ならばこの安土城に住め。行く場所などないのだろう?俺はお前が気に入った。」
「 御館様っ…!」
「 秀吉、貴様は黙っていろ。」
「 ですが…」
「 俺を狙った奴の目星はついておる。お前もわかっておるだろう。」
信長様のその一言で豊臣秀吉は
バツの悪そうな顔をして黙り込む。
『 ……。』
ー 俺はとことん嫌われているらしいな…
「 あらた、お前は幸運を呼ぶやもしれん。…秀吉、あらたが居る部屋をそのまま使わせてやってくれ。」
「 …わかりました。」
「 で、光秀…俺を狙ったやつの行方は?」
「 はっ、本能寺で信長様を狙った賊は遺体となって発見、拠点は今もわかってません。それと…もう一つ報告が…、」
目をスッと細め、一呼吸置くと
真剣な面持ちでまた言葉を紡ぎ出した…
「 何でも…死んだはずの越後の龍が生きていると言う噂を耳にしました。」
ー 越後の龍…?
「 更に病死したとされる甲斐の虎を懐に隠しているとのこと… 」
「 ほう…それで、ことの真偽は?」
「 まだ噂以外は耳にしておりません…ですが、この光秀がこの耳と目で確かめることと致します。」