第1章 面影 〜サスケ〜
その日の授業は、いつか聞いたようなことばかり言っていて、別に面白いものではなかった。
しかしサスケには、今までで一番楽しいアカデミーだった。
授業中、すぐ横を見ると、いつも姉がいて、楽しそうに授業を受けている。
サスケにとって、これ以上に幸せなことはなかった。
昼休みになると、二人は屋上へ向かった。
「……ふー……今日も良く晴れてて、気持ちいいなぁ……ねえ、サスケ?」
全身に光を浴びて、少女はうーんと伸びをした。
日の光でキラキラと輝く銀髪と、雪の肌、大きな青い瞳の対照が美しかった。
「うん……そうだね。」
サスケは思わずそれに見とれてしまい、ボーっと上の空で返事した。
一瞬後、ハッとした。
昔は当たり前だと思っていたが、彼の姉は、相当の美形だったのだ。
確かに昔も、可愛くはあったが……今の彼女は、記憶の中にはない、微妙な色気とつややかさを漂わせていた。
「……ん?どうしたのサスケ?私の顔、何かついてる?」
弟に凝視されて、少女は不思議そうに小首を傾げた。
「……ううん。なんでもないよ。ほら、姉さんも座ろうよ。」
サスケはそう言って笑うと、屋上のベンチに腰掛けた。
「……ふーん?まあいっか。」
少女はそう言って、サスケのすぐ横に腰掛けた。
近くで長い髪が揺れたとき、ふわっと懐かしい香りがして、一瞬、もっと嗅ぎたいと思い、衝動的に少女を抱き寄せていた。
「姉さん……」
少女の首筋に顔を埋め、サスケはボソリと呟いた。
香り立つ甘く懐かしい匂いに陶酔して、ゆっくりと息を吐き出せば、くすぐったかったのか、少女はピクリと身体を震わせた。
「うにゃっ⁉︎どうしたのサスケ?くすぐったいよぉ……」
少女がサスケの胸を押し返そうとする。
しかし、その力はそこまで強い訳ではないので、サスケを離れさせるには至らなかった。