第1章 面影 〜サスケ〜
サスケが朝食を食べ終わると、二人は昼食のおにぎりを持ち、アカデミーに急いだ。
アカデミーまでの道中、二人にはうちは一族をはじめとした大勢の人が挨拶をし、
少女はその一人一人に礼儀正しく元気な返事をしていた。
その度に、挨拶した方は、とても嬉しそうな、満足そうな顔をするのだった。
サスケは道行く誰もを虜にする姉を見て、ああ、姉さんてこんな人だったなと、喜びを新たにしていた。
結果的にアカデミーにはギリギリ間に合い、少女はガラッと教室の扉を開いた。
「……フー、ギリギリセーフ……」
少女が額に浮いた汗を拭い、自分の席に向かおうとしたとき、甲高い声が二人に降りかかった。
「あ、姉ちゃんとサスケェ!チコクギリギリだってばよ!」
その威勢のいい声の主、ナルトは、既に席についていた。
「えへへ、ついうっかり。先生はまだみたいね。よかった。」
少女はチロリと舌を出して笑うと、突っ立っているサスケの手を取って引っ張った。
「ほらサスケ。ボケっとしてると、先生来ちゃうよ。早く座ろう。」
「……うん。」
サスケは姉がアカデミーにいることに違和感を持ちつつも、言われるがまま少女の横に腰を下ろした。
少女は通路を挟んで隣のサクラやいのに挨拶され、さっきと同じように、人の心を蕩けさせる微笑みを振りまいていた。
サスケはサクラ達と楽しそうに話をする姉を、微笑ましい気持ちで見ていた。
記憶の中の姉には、友達と呼べる友達は皆無だったせいもあるだろうか。
しばらくして教室にイルカが入って来て、今日もアカデミーが始まるのだった。