第1章 面影 〜サスケ〜
だが逆に、自分に余程の自信があるからこそ、そんな風にいられるのかもしれないと、純粋に興味が湧いた。
少し考えて、サスケは少年の申し出を受けることにした。
強ければ成長の糧になるし、弱ければボコボコにしてしまえばいい。
そんな、軽い気持ちで。
「……面白い。やってやろう。」
サスケがそう言った次の瞬間。
「わ〜い、ありがとう!」
目の前の少年は、冬のお日様のように温かく笑ったのだった。
男にあるまじき可憐さを漂わせる少年に、サスケは少々面食らった。
「……ふん。そうかよ。」
これしきのことで大袈裟に喜ぶ少年を少しばかりバカにしながらも、サスケは満更でもなかった。
五月蝿くも騒がしくもなく、こんな風に自然に好意を向けられて、彼に敵意を持てる人間は、まずいないだろう。
そのくらい、見た方も胸の奥が温まるような微笑だった。
「……じゃあ、行くぞ…………」
少年は微笑を急に収め、真剣な表情になると、左脚を引き、両腕を構えた。
「……いつでも来い。」
サスケは膨らみかけていた気持ちに針を刺してしぼませると、手裏剣をしまい、いつもの冷たい表情になった。
二人の間に一瞬の沈黙が流れ、次の瞬間、少年はサスケに飛びかかっていた。
少年の拳や蹴りをサスケは紙一重のところで受け止め、攻撃に転じようとするのだが、そう簡単にはいかない。
背丈の割に体重の軽い少年は、あまり力が強い訳ではないようで、一発一発はそう重くはない。
スピードも、サスケがギリギリ見切れる範囲で、特別速い訳ではない。
体術の型が奇抜な訳でもないし、その少年の体術は、ごく普通のように見えた。
それなのに、決して抜けない。
少年の攻撃にサスケが対応する、その繰り返しで、サスケが自分から攻撃することはできなかった。
サスケの細かな動きに、予測していたかのように対応し、自らのペースに引きずり込む。
まるで試されているようだと、サスケはチラッと思った。