第1章 面影 〜サスケ〜
ルナが木ノ葉を抜けてかれこれ五年。
そして、ルナが皇レイとして木ノ葉に戻って一日。
サスケは転校生の少年のことなど大して気にせず、いつも通りに修行に励んでいた。
そこに忍び寄る黒い影は、果たして。
サク、と草を踏み分ける音を聞きつけて、サスケが振り返ったとき、背後5mほどの所にいたのは、例の黒髪の少年だった。
「……ん?お前、今日来た…………」
サスケが少しばかり怪訝そうに、少年の顔をチラリと見る。
黒檀のように黒い髪、色白で細面の顔、血のように赤い瞳。
彼の身体的特徴は、サスケにある人物を思い出させた。
「ふふ、転校生の皇レイです……どうぞよろしく。」
少年は、サスケの無遠慮な視線など全く気にしていないかのように、ふわりと笑って、軽やかに一礼した。
「……ああ、そうかよ。」
一瞬後、サスケの口をついて出て来たのは、そんなつれない台詞だった。
かつて亡びた自らの一族にそっくりな外見を持つ少年を前にして、サスケは素直になれなかった。
しかし、少年はそれにもめげず、にこやかに会話を繋げようとする。
「……修行してるのかい?」
「……見りゃわかるだろ。」
そう言ったサスケの手には、手裏剣が握られていた。
サスケが、わかったらジャマすんじゃねぇ、と少年を追い払おうとしたとき、彼は突然、思いついたように口を開いた。
「……じゃあさ、俺も一緒にやっていい?ていうか、組手しよう!」
少年はごく無邪気にそう提案した。
その、断られることを最初から想定していないかのような、期待に満ちた眼差しに、サスケは驚きを隠せなかった。
これだけ冷たく当たっているのに、なんなんだコイツは、と。