第1章 面影 〜サスケ〜
瞳だけではない。少女の肌、唇、髪、サスケに触れている指も……その全てが美しく、可憐で、それでいてあでやかで……
これに劣情を抱かないのはかえって不自然だと思うほど、彼女は蠱惑的だった。
サスケは、ずっと必死で押さえていたものが熱を持つのに気がついて、焦り出した。
「や、だって俺、いびきがうるさいかもしれないし……」
「……うそ。サスケはいびきなんてかかない。私もかかない。だから、一緒に寝よう?」
少し無理なサスケの言い訳をピシャリと却下し、少女が今度は、サスケの腕に絡みつく。
「で、でも!……そうだ、俺あんまり体調良くないから……うん、多分風邪のひき始めだよ。
伝染しちゃったら大変だし、だから……」
「……なら、いつ具合悪くなっても大丈夫なように、一緒にいた方がいいもん。私静かにしてるし。
それに、私風邪なんて引いたことないの、サスケも知ってるでしょ?だから、ね?」
またしてもサスケの言い訳を論破し、ギュウッと、サスケの身体を抱きしめる。
胸にこじんまりと柔らかいものを感じて、サスケの身体が熱を増す。
「え、えっと…………」
いい言い訳が思いつかず、サスケは口籠もった。
早く、早く何か言って離れなければ、姉に気がつかれてしまう。
募る焦燥感と欲望が、サスケから思考力を奪っていった。
「……うぅ…………サスケ、なんで?私のこと、嫌いになった?」
少女が泣きそうな顔でサスケを見上げ、問いかける。
「違う、そんなんじゃ…………」
サスケはブンブンと首を振って、即座にそれを否定した。
嫌いになる?
たとえ地球が吹っ飛んでも、そんなことがある訳がない。
違うんだ……嫌いになんてなってない。むしろ逆だから困っている。
そう思ったときには、時既に遅しだった。