第1章 面影 〜サスケ〜
夕飯が済むと少女が入浴する番になり、風呂場からはザーというシャワーの音が聞こえ始めた。
サスケは食事の後片付けを済ませた後、二人分の布団を敷き、何やら緊張していた。
姉に対する今の気持ちと自分の欲望がぐちゃぐちゃに混ざって、上っ面は冷静だったが内心パニックだった。
先ほど、他に誰もいないし、寂しいから一緒に寝ようよと姉に頼み込まれて、思わずそれに頷いてしまったためだ。
風呂に入ったばかりの彼女は、きっと昼間よりももっといい匂いがして、肌はもちもちで、温かくて…………
姉の身体に触れることばかり考えてしまう自分がいやになったり、逆に、早くそれをやりたくてたまらなくなったり。
色々考えた末、サスケは、やっぱり別々の部屋で寝ようと思った。
今の自分は、何をするかわからない……いや、わかりたくない。
そんな気持ちで、サスケが布団を動かそうとしたとき、脱衣所から姉が出て来た。
「あー、気持ち良かった……あれ、サスケ、何してるの?」
白いワンピースタイプの寝間着を着た少女が、いつの間に乾かしたのか、サラサラの長い髪を手櫛で梳かしながら訊いた。
「姉さん……あの、やっぱり、別々に寝ようと思って……」
サスケが言いにくそうに申し出る。
姉を悲しませる可能性のあることをするのは、サスケにとっても嫌なことだった。
「……私と一緒じゃ、嫌なの?」
数秒の沈黙の後、少女は悲しげに呟いた。
「や、そういうわけじゃ!……だって俺達、もう子供じゃないし……」
サスケは予想していたとはいえ、姉の落ち込み具合に慌てた。
「うー……でも、寂しいんだもん……いいじゃない。一緒にいてよ。
……ね?お願い。」
少女がサスケの手を握り、懇願する。
瞳に浮かぶ鈍い輝きは、サスケを煽っているかのように、ゆらゆらと揺れていた。